2021年2月10日にリリースされたSARD UNDERGROUNDの3rdシングル「ブラックコーヒー」。
作曲は「少しずつ 少しずつ」の作曲及びZARDの後期に作曲を多数担当された大野愛果氏。そして作詞は今作が初の挑戦となるボーカルの神野友亜が担当した。
本格的にオリジナル曲へ足を踏み入れた今作について、感想を綴ってみよう。
出典:http://sard-underground.jp/
大野愛果節炸裂のSARD UNDERGROUND「ブラックコーヒー」
前途したように、「ブラックコーヒー」の作曲を担当したのは大野愛果氏だ。大野愛果作曲のZARD未発表曲と言われても違和感がないくらい大野愛果×ZARDのタッグ曲を彷彿とさせる曲調ではないだろうか。シングル表題で言うと「かけがえのないもの」や「もっと近くで君の横顔見ていたい」を初めて聴いた時と近い印象だった。
正直、シングル表題としては地味なんだがその地味さも大野愛果らしくもありZARDらしくもあると言えるだろう。
もっと言えばビーイングらしい曲調である。「ブラックコーヒー」はショートアニメ「おかしなさばくのスナとマヌ」の主題歌となっているが、個人的にはコナンのエンディング感がある楽曲だと思う。
大野愛果氏の楽曲は神野友亜の声に合っている。既存のZARD楽曲然り、大野さんと神野さんの相性は抜群だ。
そういった意味でも、今回はZARDらしさとSARD UNDERGROUNDらしさが共存した楽曲になっているのではないだろうか。故に、SARD UNDERGROUNDファンにも評判だ。
エモい恋の歌詞は令和でウケる?
「ブラックコーヒー」の歌詞は一言で言えば恋愛がテーマ。恋をした女性の心情が描かれている。エモーシャナルな内容だ。
歌詞の主人公の女性は恋をした相手に近づきたくて元々は嫌いだったブラックコーヒーを飲むようになり、飲んでいるうちに好きになった。タイトルにもなってる「ブラックコーヒー」は、恐らく好きな人の飲み物なのだろう。
好きな人の影響でそれまで興味がなかったものに興味を持つようになったり、好きな人が好きなものを観たり触れたりするとその人のことを感じられるから無条件に好きになったり反応したりすることはある。この歌詞は、そんな恋愛の心理をブラックコーヒーに例えたものだ。
このように、「ブラックコーヒー」は心理描写が前面に出された歌詞である。この心理描写の強い歌詞は坂井泉水さんが得意としていたものだ。心理描写をメインに描かれているが、その分具体的なエピソードが描かれていない。要するに、背景描写の要素があまりない。
それが歌詞に普遍性を持ち、聴き手が各々の経験に置き換えられるため、多くの人に共感を得られたのだろう。「ブラックコーヒー」の歌詞はその坂井節というかZARDイスムを受け継いでいる。
「ブラックコーヒー」リリース付近ではエモい恋愛ソングがヒットする傾向にある。wacciの「別の人の彼女になったよ」、優里「ドライフラワー」、川崎鷹也「魔法の絨毯」、Novelbright「ツキミソウ」あたりだ。これらの多くは別れた恋人にまつわる切ないエピソードや思いを歌詞にしたエモい楽曲だ。Novelbright「ツキミソウ」なんかは女々しさもある。
ただ、これらは心理描写に加え背景描写も大いに描かれており、具体性のあるエピソードが歌詞となっている。ヒゲダンの「Pretender」なんかはほぼ心理描写なので心理描写メインの歌詞や楽曲が一概にヒットしないわけではないが、サビの歌詞では具体性のある心理描写と背景描写が同時に描かれている。それでいてメロディーもJ-POPらしくわかりやすいメロディーで全てにおいてキャッチーだ。
そういった意味で「Pretender」は非常に秀逸な作品であり、J-POP史に残る名曲だと思う。
とにかく、令和はエモい恋の歌は必須のようだ。